「命令」や「依頼」を表す動詞の形が命令形です。
日本語の命令文は、別の人に行動を強制したり、禁止したりするために使用されることが多く、威圧感がありますが、スペイン語では、日本語よりカジュアルでよく使用されます。
例えば、「¡Dime!」ですが、「私に言え!」というよりも「教えて」とか「言ってみて」みたいな感じでよく使われています。
また、3人称の「usted, ustedes」 に対する命令(~してください)は、「接続法動詞+主語」の文形で丁寧さを表します。
命令文には「Por favor」をつけるとより丁寧さが出ます。
命令形の活用
Conjugación
スペイン語の命令形は、
- 一人称 複数(nosotros/nosotras)
- 二人称 単数と複数 (tú, vosotros/vosotras)
- 三人称 単数と複数 (usted/ustedes) 丁寧な形
があります。
注意が必要なのは、「否定」の命令文の場合では、すべての動詞は「接続法」の活用になります。
本来の命令は、tú(君)や、vosotros/vosotras(君たち)に対するものなので、2. の二人称から始めます。
2人称単数:tú
tú(君)に対する命令形は、
直説法 現在 3人称 単数形
を使います。(él, ella, usted の活用と同じ)
- hablar(話す) ¡Habla! (話しなさい)¡No hables!(話さないで)
- aprender(学ぶ) ¡Aprende!(学びなさい) ¡No aprendas!(学ばないで)
- escribir (書く)¡Escribe!(書いて) ¡No escribas!(書かないで)
不規則な活用(Conjugación irregular)
- decir: di
¡Di algo, por favor!(何か言ってください) - hacer: haz
¡Haz los deberes!(宿題をして) - ir: ve
¡Ve a comprar el pan, por favor!(パンを買いに行ってください) - poner: pon
¡Pon la mesa, por favor!(テーブルをセットしてください) - salir: sal
¡Sal un poquito a pasear!(散歩に行って) - ser: sé
¡Sé más valiente!(もっと勇気を出して) - tener: ten
¡Ten paciencia!(我慢しろ) - venir: ven
¡Ven aquí un momento!(ちょっと来て)
2人称複数:vosotros/vosotras
vosotros/vosotras(君たち)に対する命令形は、
不定詞の語末「r」を「d」に変えて
作ります。(不規則はないので、すべての動詞に適用)
- hablar: ¡Hablad! ¡No habléis!
- aprender: ¡Aprended! ¡No aprendáis!
- escribir: ¡Escribid! ¡No escribáis!
3人称単数:usted
usted(あなた)に対する命令形は、
接続法 3人称 単数形
を使います。
- hablar: ¡Hable! ¡No hable!
- aprender: ¡Aprenda! ¡No aprenda!
- escribir: ¡Escriba! ¡No escriba!
3人称複数:ustedes
ustedes(あなた方)に対する命令形は、
接続法 3人称 複数形
を使います。
- hablar: ¡Hablen! ¡No hablen!
- aprender: ¡Aprendan! ¡No aprendan!
- escribir: ¡Escriban! ¡No escriban!
1人称複数:nosotros/nosotras
nosotros/nosotras(私たち)に対する命令形は、
接続法 1人称 複数形
を使います。
「私たちは(一緒に)~しましょう」という意味になります。
hablar: ¡Hablemos! (話しましょう) ¡No hablemos!(話さないようにしよう)
aprender: ¡Aprendamos! (学びましょう) ¡No aprendamos!(学ばないようにしよう)
escribir: ¡Escribamos!(書きましょう) ¡No escribamos!(書かないようにしよう)
しかし、
「ir」の場合は、「vayamos」より「vamos」を使うことが圧倒的に多くなりましたので、例外です。覚えておきましょう。
再帰代名詞との命令文
再帰代名詞(te, se, nos, os, se)は、動詞の後ろに連結します。
否定命令では、否定助詞と動詞(接続法現在形)の間に再帰代名詞を置きます。
abrocharse(締める)
- abrocha + te
¡Abróchate! ¡No te abroches! - abroche + se
¡Abróchese! ¡No se abroche! - abrochemos + nos
¡Abrochémonos! ¡No nos abrochemos! - abrochad + os
¡Abrochaos! ¡No os abrochéis! - abrochen + se
¡Abróchense! ¡No se abrochen!
ここに注目!
1人称複数形では「s」 が省略されます。
¡Abrochémonos el cinturón de seguridad!(シートベルトを締めましょう)
✕ abrochémosnos
2人称複数形では「d」 が省略されます。
¡Abrochaos el cinturón de seguridad!(君たち、シートベルトを締めなさい)
✕ abrochados
目的格人称代名詞(me, te, lo, la, le, nos, os, los, las, les, se)「~に、~を」を伴う場合、肯定形では再帰代名詞の直後に、否定形では再帰代名詞と動詞の間に置きます。
Abróchate el cinturón. → Abróchatelo.(君はそれを締めて)
No te abroches el cinturón. → No te lo abroches.(君はそれを締めないで)
命令形で注意すること
yo に対する命令形はありません。
私が私に向って命令する時でも、2人称 単数形を使います。
Una voz interior me dijo: ¡Ten mucho cuidado! (心の声が私に言った。しっかり気をつけて!)
命令文に変わる形
同じ命令文として表現できるものがいくつかあります。
「a」+「不定詞」
¡A callar!(黙れ)
¡A correr!(走れ)
接続法現在
¡Que me digas la verdad!(本当のことを言えってば)
「Que」が付くと「強い調子」の命令に近い表現になります。
直説法 未来
Me dirás la verdad.(本当のことを言いなさい)
不定詞
¡Levantaros en seguida!(君たちはすぐに起きなさい)
副詞
¡Fuera!(あっちへ行け)
命令形による定型表現
anda
驚き・落胆
「おやまあ」
¡Anda… te has teñido de rubio!(まあ、金髪にしたんだ!)
促し、懇願、励まし、説得
「さあ」「ほら」
Acompáñame, ¡anda!(私と一緒に来て!ねえ。)
¡Anda!, no pienses más en eso.(さあ、もうそのことは考えないで。)
vaya
驚き、失望
「あらまあ」「なあんだ」
¡Vaya! Está lloviendo y yo sin paraguas.(やれやれ、雨だけど傘なしか。)
強調+名詞
「すごい~」
¡Vaya gente! (すごい人!)
¡Vaya calor! (ひどい暑さ!)
venga
促し、懇願、励まし、説得
「さあ」
¡Venga, chicos! ¡Vamos a empezar!(さあ、みんな、始めよう!)
¡Venga, hombre! No pasa nada.(さあ、さあ!大丈夫だよ。)
不信、拒絶
「まさか」
¿Sabes que Javier se casa?(ハビエル、結婚するんだって。知ってた?)
– ¡No! ¡Venga ya!(いいえ、まさか、そんな!)
oye/oiga
呼びかけ、注意を喚起
「ねえ」「ちょっと、すみません」
Oye, no puedes tocar.(ちょっと、触っちゃだめだよ。)
Oiga, no puede tocar.(すみません、触れてはいけませんよ。)
mira/mire
注意を喚起
「ねえ」「ほら」
Mira, esta es Paco.(ほら、あの人がパコ。)
Mire, allí viene el taxi.(ねえ、あそこにタクシーが来たよ。)
¿diga?/¿dígame?
かかってきた電話への応対
「もしもし」
¿Diga?(もしもし?)
toma
驚き
「えっ」「おや」
¡Toma!, no sabía que estuvieras aquí.(えっ、君がここにいるなんて知らなかったよ。)
重要性を否定
「くだらない」
¡Toma!, Eso lo sabe todo el mundo.(なんだ!そんなことみんな知っているよ。)
toma/tome
ものを渡すとき
「はい」「ほら」「どうぞ」
Toma, aquí tienes un boli.(ほら、ボールペンだよ。)
Tome, aquí tiene su libro.(どうぞ、あなたの本です。)
命令形の作り方まとめ
命令文を作るルールをまとめると、
- tú(君)
直説法 現在 3人称 単数形 - vosotros/vosotras(君たち)
不定詞の語末「r」を「d」に変える - usted(あなた)
接続法 3人称 単数形 - ustedes(あなた方)
接続法 3人称 複数形 - nosotros/nosotras(私たち)
接続法 1人称 複数形 - 否定形
主語に応じる接続法
となります。
いろんなフレーズを考えて活用を覚えてみましょう。
まずは、下のよく使う8つの「不規則動詞2人称単数形」から始めてみてください。
- decir: di
- hacer: haz
- ir: ve
- poner: pon
- salir: sal
- ser: sé
- tener: ten
- venir: ven
簡単に覚えておく方法
文法的に説明すると、少し細かいのですが、ざっくり言うと、「命令」は「依頼」で「事実」ではなく「想像」を表します。
例えば、(3人称の場合ですが)
「事実」
Habla usted español.(あなたは、スペイン語を話します。)
¿Habla usted español?(あなたはスペイン語を話しますか?)
「依頼(想像)」
Hable español.(スペイン語を話して。)
事実を表す現在形の活用は、「er / ir 動詞」を「-e / -en」に変え、「ar 動詞」は、「-a / -an」に変えて作ります。
ということは、「~して」は、「~する」の動詞活用を逆にすれば良い、と覚えておくと簡単です。
そして通常の依頼は目の前にいる人にするので、主語(usted)を言う必要はないので省略します。
2人以上の相手ならば、「hablen」と最後に「n」を付け、否定の場合は動詞の前に「No」を付ければ良いだけです。
動画で実践
フレーズの流れをさくっと学習できるようにしました。
スペイン語ナレーターが例文を読んで、YouTubeチャンネル「独学スペイン語」にアップしています。
ぜひ動画も参考にしてみてください。
命令形の疑問を共有
東京大学の上田博人先生のスペイン語ガイドブックの中に命令文に関しての情報がありましたので、ここでシェアします。
スペイン語を学んでいる学生さんたちの疑問がとても興味深く理解するうえで参考になりました。
Gracias por leerme. Hasta la próxima.