無冠詞
「1つ」ととらえられず、はっきしした区切りがないために「あれ」と指示できないものや、漠然と本質を表すものです。
無冠詞となるのは、複数形や数えられない名詞の場合など、不定冠詞(un / una)が使えないときです。
- 固有名詞「国名」や「人名」
España, Japón, Francia, Maria
(スペイン、日本、フランス、マリア) - 身分、職業、国籍などを一般的に表す場合
Ella es profesora.
(彼女は教師です。)
Soy estudiante.
(私は学生です。) - 抽象名詞や物質名詞(特に不可算語、連続語)が目的語(補語)となる場合
Tomamos café en las terrazas.
(私たちはテラスでコーヒーを飲みます。)
Necesitamos agua y aire para vivir.
(私たちが生きていくためには、水と空気が必要だ。) - 数的な制限を受けず漠然と表す場合
Hay niños en el parque.
(公園に子供たちがいる。) - hablar, enseñal,aprender, estudiar などの後ろの国籍名
Los habitantes de España hablan español.
(スペインの人々はスペイン語を話す。) - 説明的な同格「…である」
Estoy en Japón, capital de Tokio.
(私は日本の首都である東京にいる。) - 移動の方法を表す場合
Voy en autobús.
(私は、バスで行きます。) - 材料を表す場合
tarta de manzana
(リンゴのタルト) - 前置詞+名詞で他の名詞の意味を補足する場合
Quiero tomar café con leche.
(私は、カフェオレが飲みたい。) - 月を表す場合
en enero
(1月に)=en el mes de enero - 漠然としている時期
En invierno voy al norte a esquiar.
(私は、冬には北へ行ってスキーをする。) - 人への呼びかけ
Señol López, ¿Cómo estás?
(ゴメスさん、お元気ですか?) - 個人名(洗礼名)につける敬称「don」(男)「doña」(女)
don Francisco, doña Teresa
(フランシスコさん、テレサさん) - 身体の一部であっても、前置詞+名詞で他の名詞の意味を補う場合
(tener などと習慣的に使われる場合)
Tengo dolor de cabeza.
(私は頭が痛い。) - hacer の三人称単数で自然現象を表す場合
Hace sol.
(日が照る。)
どのような名詞が不可算名詞なのか?
名詞を数えるには、「1つ目」と「2つ目」の区切りが必要です。
そのため、決まった形を持たず、「1つ目」と「2つ目」を明確に区切らない名詞は、不可算名詞となります。
総称を表す名詞
- dinero(お金)
硬貨「moneda」 や、お札「billete」は1枚2枚と数えられますが、「dinero」 は、硬貨・お札などを合わせた総称のことなので、1つ2つ、とは数えられません。 - mueble(家具)
家具は、机や椅子などを合わせた、家具の総称なので、数えられません。 - equipaje(荷物)
カバン「bolsa」やスーツケース「maleta」などを合わせた、荷物の総称なので、数えられません。
素材や物質に着目している物質名詞
- agua(水)
「1つ目」と「2つ目」の区切りがないため、数えることができません。
数えられそうな物質名詞
「agua(水)」や「leche(牛乳)」は「区切りがないから数えられない」ことは、理解できました。それに比べて「1つ、2つ」と数えられそうな不可算名詞には注意が必要です。
「1つ目」と「2つ目」の区切りがない=「どこでも区切れるもの」と考えてみる。
- pan(パン)
どこで切っても「パン」として成立するため、数えることができません。 - tiza(チョーク)
「1本、2本」と数えられそうですが、どこで折っても「チョーク」として成立するため、数えることができません。 - papel(紙)
「1枚、2枚」と数えられそうですが、どこで切っても「紙」として成立するため、数えることができません。
抽象名詞
物質の性質や状態を表す抽象名詞も、決まった形を持たないため数えることができません。
- información(情報)
- tarea(宿題)
- consejo(助言)
- noticia(ニュース)
中性定冠詞「lo」の使い方
定冠詞には「lo」という中性形があり、単数や複数の変化はありません。
- 「lo」 + 形容詞(句)
抽象名詞や集合名詞を作る。「…なもの」「…なこと」
Lo ideal es diferente de lo real.
(理想は現実と異なる。)
Ya hemos dicho todo lo necesasrio.
(もう私達は必要なことをすべて言いました。) - 「lo」+過去分詞
「…したこと」、「…されたこと」
Él tiene la culpa de todo lo ocurrido.
(起こったことはすべて彼のせいです。)
Lo dicho, dicho.
(一度言ったことは取り消せない。) - 「lo」+所有形容詞
「…のもの」
Lo mío, mío, y lo tuyo, de entrambos.
(私のものは私のもの、君のものは二人のもの。) - 「lo de…」
「…のこと」
Olvidó lo de la reunión.
(彼は会議のことを忘れてしまった。)
冠詞は奥が深い
冠詞を付ける、付けないは、熟語や成句として、理屈では割り切れないことがあるので、そのまま覚えてしまう方が良いです。
また、慣習的な使用も多いので、これは、勉強や会話によって理解・習得していくことが大切なのです。
動詞や前置詞によって冠詞の用法がだいたい決まることがあるもの
- Me gusta el café.
(私はコーヒーが好きだ。) - Me apetece café.
(私はコーヒーが飲みたい。) - Trabajo de 9 a 5. / Trabajo desde las 9 hasta las 5.
(私は9時から5時まで働く。)
名詞が2つ以上並ぶときはふつう最初の名詞にだけ冠詞をつける
- Los jefes, oficiales y soldados combatieron con gran valor.
(隊長も将校も兵士もみな勇敢に戦った。)
しかし、
それぞれの語が独立して重要性があるときはそれぞれに冠詞をつけます。
- Se arruinaron los vencedores, los vencidos y los neutrales.
(勝者も敗者も中立の者も壊滅した。)
参考文献
- 橋本和美: 『初級スペイン語文法の授業における冠詞の教授法について』
- 上田博人: 『スペイン語ガイドブック 冠詞』
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