スペイン語の「Latinx」って知ってる?『ヒスパニック文化遺産月間』に考えたいこと

10/09/2021

『ヒスパニック文化遺産月間』について考えたいこと

「ヒスパニック文化遺産月間」または「ラテンアメリカ文化遺産月間」をご存じでしょうか。
私はスペイン語を勉強するまでは全然知りませんでした。またスペイン語が多くのラテンアメリカで話されていることも想像していませんでした。
スペイン語では「el Mes de la Herencia Hispana /  la Herencia Latina」と言われるこのお祝い、Wikipediaによると、

ヒスパニック文化遺産月間とは、アメリカ合衆国で「9月15日から10月15日まで」開催される、ヒスパニック系アメリカ人およびラテン系アメリカ人が国の歴史、遺産、文化に貢献していることを称える記念日である。

となっています。つまりラテンアメリカ人のためのお祭りです。
なぜアメリカで、ヒスパニック文化遺産月間を祝うのでしょうか?
私にとって、それは、スペイン語を勉強したおかげで興味深いものとなりました。実際にラテンアメリカを訪れて、現地の人たちと触れ合うとますます気になってきます。

では、少しずつその歴史を探ってみませんか。

ヒスパニック(hispano, na)って何?

スペイン語では「h」の発音をしないので、「イスパノ,ナ」と呼びます。意味は「スペイン(人)の」または、「ラテンアメリカ系米国人」です。

東京にある上智大学では、スペイン語のことを「イスパニア語」と呼んでいます。「Hispania」は、ローマ時代のイベリア半島のことです。

「イスパニア語」は、日本で一般的にスペイン語と呼ばれている言語のことです。かつてはスペインまたはイスパニアに西班牙という漢字をあてていたため、「西語」と略すこともあります。また、スペインのカスティーリャ地方で話されていた言葉が元になっているため、「カスティーリャ語」という名称で呼ばれることもあります。
なお、イスパニア語はイスパニア語圏(スペイン、中南米の大部分)で使われる巨大言語だと言われますが、そこで暮らす人々はイスパニア語だけを話しているわけではありません。少なくない人々が、イスパニア語に加えて、自分の地域や民族独自の言語を併用するバイリンガルとして暮らしています。たとえばスペイン第二の都市バルセロナを旅する時、イスパニア語だけで十分にコミュニケーションがとれますが、街の人たち同士の会話はこの地域独自のカタルーニャ語で交わされていることに気づくでしょう。また、中南米の多くの国では、先住民の言語が今でも用いられています。イスパで学ぶ皆さんには、イスパニア語圏が多言語社会でもあることを理解し、その豊かな個性を楽しんで欲しいと思います。

por:上智大学イスパニア語学科

スペイン語の「Latinx」って知ってる?

ラテンアメリカ人ってどんな人?

Para comprender y apreciar el sentido de esta celebración, echamos un vistazo a los términos hispano/a, latino/a y latinx

では、このお祝いの意味を理解する前に、「ヒスパニック / ラテンアメリカ人」という用語について考えてみましょう。

その呼び方には、「hispano/a, latino/a, latinx o chicano/a」などと呼ばれていますが、その定義には互換性がなく、それらの意味と起源の微妙さが彼らのアイデンティティに長年の議論を引き起こしました。

ラテン系アメリカ人の場合、ことあるごとに政府の公式手続きでは、「あなたはヒスパニック系、ラテン系、またはスペイン系ですか?」という項目があるのです。言うまでもなく、この質問に答えてチェックする小さなボックスは、事の複雑さを凝縮することはできません。フォームのその箇所に記入するたび、これらの用語が実際に何を意味するのか疑問に思うのです。

ラテンとヒスパニックの定義が完全に明確でないのなら、そのお祭りでは何を祝うのでしょうか?
そして、なぜこのお祝いはアメリカの誰にとっても重要なのでしょうか?

ヒスパニック文化遺産月間の始まり

La historia del Mes de la Herencia Hispana

ヒスパニック文化遺産月間は、Lyndon B. Johnson大統領下で、1968年、Movimiento chicano(チカーノ運動)の最盛期に、米国で初めて公式に記念日となりました。
そして、20年後、
Ronald Reagan大統領は、祝賀会を毎年9月15日から10月15日まで、30日間に延長しました。

なぜその期間なのか?

9月中旬から10月中旬までのヒスパニック文化遺産月間を祝うことには、意味があります。

9月15日は、1821年にスペイン帝国から独立した記念日であるため、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアなど、多くの中米諸国にとってたいへん重要な日です。
メキシコは、1810年にスペインから独立しました。そして、翌日の9月16日にその記念日を祝います。
チリの独立記念日は9月18日に行われます。
ヒスパニック文化遺産月間の30日の間には、10月中旬の「Día de la Razaコロンブス・デー)」と呼ばれる、Cristóbal Colón(クリストファー・コロンブス)のアメリカ発見の日も含まれます。この日は、クリストファー・コロンブスの植民地時代の栄光を称えるのではなく、ラテンアメリカに住む多くの「indígena(先住民)」やヨーロッパからなどの「mestiza / mixta(混血)」を記念するものです。

米国におけるラテン系アメリカ人の存在

La presencia de latinxs en los Estados Unidos

米国において、ヒスパニック系アメリカ人の存在は、別個の補遺であるかのように「貢献」として話す傾向があります。
真実には、北米の歴史は語りつくせない異なるものがあり、ラテン系アメリカ人は長い間、現在の米国で複雑な歴史を持っています。

17世紀初頭、イギリスからバージニアに開拓者が到着する数十年前の1565年に、フロリダ州セント・オーガスティンで「Hispanohablantes(スペイン語を話す人々)」が、この地に定住し始めたと言われています。
その後に、彼らはテキサス州からカリフォルニア州まで、入植を開始しました。

1848年、米墨戦争を終結させたグアダルーペ・イダルゴ条約では、メキシコが、1,500万ドルと引き換えにアメリカ合衆国へ「アリゾナ、カリフォルニア、ニューメキシコ、ネバダ、コロラド、ユタ、テキサス」を含む136万平方キロメートルの広大な土地を譲渡し、「Rio Grande(リオ・グランデ川)」がメキシコの北の国境になることを確立しました。また、同時にメキシコの米国に対する債務325万ドルは帳消しとなりました。
重要なことは、これらの地域で過ごしていた人々が、突然「アメリカ人」と呼ばれるのです。そして、「自分の国に帰れ!」と言うのを聞いたとき、自分たちの子孫が感じなければならない欲求不満を想像するのは難しいことではありません。

20世紀末の「Guerras de independencia hispanoamericanas(イスパノアメリカ独立戦争)」は、米国がキューバ独立戦争を支持し、プエルトリコおよび、より遠方のスペイン領土を支配したため、カリブ海と太平洋における米国の影響力を強化しました。グアムやフィリピンなども。
20世紀、アメリカは都市の拡大、南北アメリカの外交政策、冷戦の到来、政情不安により、アメリカへの移民運動が出現しました。

ヒスパニックとラティーノって別なの?

Entonces, ¿es hispano/a, latino/a o latinx?

米国に住むスペイン語圏の人々を表すために使用されるさまざまな用語には微妙な違いがあります。
形容詞の「«hispano/a» イスパノ」と「«latino/a» ラティーノ」は、同じ意味で使用されるときもありますが、私の何人かのアミゴたちも含め、誰もがこの使い方に同意するわけではないようです。
この理由は、ヒスパニック文化遺産月間を改めて文脈化すると理解できます。

ヒスパニック

米国で使われている「ヒスパニック」という言葉は、官僚的な場で生まれました。
1970年代、国勢調査を実施する際に生じた空白を埋めるために、米国政府によって作り出されました。
その定義は、「法的に米国に住んでいて、スペイン語を話す出身または子孫である人々」を指します。このカテゴリには、スペインと、中央アメリカ、南アメリカ、太平洋でスペイン人が植民地化したすべての地域、つまりスペインと歴史的なつながりがある場所が含まれます。それが征服者の行動と植民地化プロセスを呼び起こすので、何人かの人々がその用語から距離を置く傾向があるのはまさにこの理由のためです。

ラティーノ

一方、「ラティーノ」という言葉は、多くの人が採用している代替手段です。これにより、ラテンアメリカの人々は、話す言語に関係なく、省略された方法で名前が付けられます。
つまり、ラテンアメリカの国の人々です。中には、ブラジル人もラテン系アメリカ人と見なされる時があったりしますが、公用語はポルトガル語なので、ヒスパニック系ではありません。
そして、出身国がスペインである人々は「ヒスパニック」と見なされますが、「ラテン系」とは見なされません。
オランダ語を話す南米のフランス領ギアナとスリナム共和国の出身者がラテン系であるかどうかについても議論があります。
フランス語はスペイン語やポルトガル語のようなロマンス諸語であるため、この定義もまた複雑ですが、オランダ語はまったく異なる言語族に属しています。

過去10年ほどにわたって、「Latinx」という用語は、「Latino」や「Latina」の性別のない代替手段として提案されてきました。これは、スペイン語などの男女区別がある言語において「非バイナリジェンダー」を可能にするためです。
若い話者の間でより多く使用されており、la inclusión de género(ジェンダーのインクルージョン)を促進する多くの社会運動の重要なツールです。
今後はより浸透していく語彙だと思うので、覚えておくと良いですね!

チカーノ

また、「«chicanos» チカーノス」や「«chicanas» チカーナス」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これらの用語は、米国に住むメキシコ出身または子孫の人々を指すために使用されます。
1960年代に、アイデンティティ、民族性、文化の政治的表現である「チカーノ運動」によって目立つようになりました。チカーノは「ラテン系アメリカ人」ですが、すべてのラテン系アメリカ人が「チカーノ」であるわけではありません。

では、正しい用語は何ですか?

この質問に対する完全な答えはありません。そして多くの人々にとってそれは個人的な好みの問題です。
国勢調査の目的上、「ヒスパニック」の指定は、とりわけ自己識別の特徴を持っています。
彼らがそうだと言えば「ヒスパニック」であり、そうでなければ「ヒスパニック」ではありません。
米国政府は、国勢調査で「ラティーノ」という用語を認めていません。
米国南西部では、人々が自分たちを「ヒスパニック」だと聞く可能性は高いですが、「ラティーノ」という用語は、一般的には西海岸よりです。
それでも、多くの人々は「ヒスパニック」と「ラティーノ」という用語を無視して、出身国と同一視することを選択しています。

覚えておくべき重要な側面は、「ヒスパニック」も「ラティーノ」も人種的アイデンティティを指すのではなく、その祖先と出身を指すだけであるということです。

スペイン語の「Latinx」って知ってる?

ヒスパニック文化遺産月間の意義

¿Y qué relevancia tiene todo esto?

このように、各用語の意味に対する明確な答えがないのが現状です。
が、正確に言うならば、この正確な定義の欠如が、ある意味で彼らを定義するものです。
スペイン語を話したことがないニュージャージーの第2世代のドミニカ人、カリフォルニアの誇り高きチカーノインディアン、または中南米やヨーロッパからの移民たちに共通するものは何でしょう?
人種、宗教、または特定の美食や文化以上に、彼らを結びつける異質な絆は、自分自身を押しつけて抵抗する能力です。

したがって、ヒスパニック文化遺産月間が始まると、民族や子孫に関係なく、それを祝う必要があることを忘れません。
中央アメリカ諸国の国家独立、ラテンアメリカの歴史、そしてラテンアメリカの歴史への貢献を記念しているだけではなく、彼らはアメリカ自体、アメリカが何であるかを作るすべてのアイデンティティとすべての物語の交差性をお祝いするのです。

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