「el」「los」「la」「las」のことを、スペイン語では「定冠詞」、「un」「una」のことを「不定冠詞」と言います。
冠詞は日本語に存在しないため、日本人にとって最も難しい文法の一つだと思います。
グアテマラにいた時、学校の先生に質問しても、なんだか説明不足で、「冠詞はわからないもの」としてそのまま放置していました。
何年もグアテマラに住んでいるアメリカ人アミゴのクラスメートでさえ「冠詞って難しいよねぇ~」と言っていたくらいです。
しかし、いつまでも、悩ましくしていられません。
私はその用法をよく理解するために、いろんな術を使い勉強しなおし、やっと身につけることができました。
冠詞は、たくさんのルールがありますが、少しずつ覚え、あとは見たり聞いたり話したりして、冠詞の機能を理解していくしかありません。
では、さっそく、冠詞の使い方を徹底解説していきます。
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冠詞とは何か?
簡単に言うと、冠詞は名詞の性質や属性を示す役割を持つ単語です。
冠詞は英語にもあります。定冠詞は「the」にあたり、不定冠詞は「a/an/some」です。
日本語は、「ゆるい」言語のため、冠詞と呼ばれる文法は存在しません。
1つ、2つと数えられる「本」、数で測れないので、量で表す「水」、目に見えない「愛」、都市名である「東京」など、種類が異なる名詞に文法的な区別はなく、そのままの名称で使うことができます。
それとは逆に、スペイン語は名詞に「厳格」な言語です。
その名詞が数えられるのかどうか、また、会話・文章内ではじめて登場したのか否かで、異なる文法を用いる必要があるのです。
冠詞の形
後ろに置かれる名詞の性と数に応じて次のように冠詞の形が変化します。
定冠詞
el + 男性単数名詞(el libro)その本 | los + 男性複数名詞(los libros)それらの本 |
la + 女性単数名詞(la casa)その家 | las + 女性複数名詞(las casas)それらの家 |
lo 中性(lo bonito)きれいなこと |
不定冠詞
un + 男性単数名詞(un libro)ある一冊の本 | una + 女性単数名詞(una casa)ある一軒の家 |
不定冠詞「un / una」
「これから名詞が1つ登場します」の合図
もともと「1つの」という意味なので、数えられる名詞の単数形にしかつけられません。
- 数えられるものの名詞の前に置いて「ひとつの」「ひとりの」
複数では「いくつかの」
Tengo un libro.(私は一冊の本を持っている。)
Hay unos niños en el parque.(公園に数人(2, 3人)の子供がいる。) - 特定のものと不特定のものを指す「ある…」「どこかの」
(特定) 話し手のみ内容が分かっている場合
Eso está escrito en una novela.(それはある小説に書かれている。)
(不特定) 話し手も聞き手も分かっていない場合
Pasamos la tarde en un jardín.(どこかの庭で午後を過ごしましょう。) - 形容詞を強調
「何とも言えないほどの」「一種独特の」に近い意味を表す
una luna muy hermosa(一種独特の、なんとも言えないほど美しい月)
con unos ojos azules(一種独特の、青い目で)
Él tiene unos padres estupendos.(彼にはすばらしい両親がいる。)
不定冠詞に複数はナシ
- 不定冠詞は基本的に単数だけです。
- 複数形の「unos,unas」は不定形容詞なので、不定冠詞の複数形ではありません。
たとえば、
「un libro」の複数は「libros」です。「dos libros」(本2冊)
「unos libros」は、(数冊の本)(何冊かの本)という意味になります。 - 数字の前の「unos, unas」「約、ぐらい、ほど」という意味です。
たとえば、
unas diez casas(10軒ぐらいの家)
unos cincuenta libros(約50冊の本)
「un」+ 女性名詞
- アクセントのある「a, ha」で始まる女性単数名詞の前では「una」ではなく「un」が使われます。
王立アカデミーでは「una」を勧めていますが、実際には「un」のほうが多く使われています。
「un haya」/「una haya」(1本のぶなの木) - 冠詞と名詞の間に形容詞がある場合は「una」になります。
「una hermosa haya」(美しいぶなの木)
不定冠詞「un / una」の使い方
基本的には、聞き手にとって、具体的にわかっていない人や事、物を指します。
- 聞き手が了解していない人や事、物を漠然と指す
「ある…」「何かの」「どこかの…」
Ayer compré un libro muy interesante.
(私は昨日、とてもおもしろいある本を買いました。) - 種類一般を表わす
「どの…も」「…ならばどれでも」「…というものは」
Un estudiante de medicina debe saber esto.
(医学の学生ならばこのことを知っていなければならない。) - 同一性を表わす
「同じ…」
¡Qué importa bastón, idea o luz! En el fondo todo es un ideal.
(権力も理念も光も問題ではない。根本ではすべては同一の理想なのだ。) - 固有名詞の前について「…という人」
Un señor Fernández desea hablar con usted.
(フェルナンデスさんという方があなたとお話ししたいそうです。)
「…のような人」「…のようなもの」
En un Madrid, no faltan teatros.
(マドリードほどの都市に劇場がないはずがない。) - 名詞(句)を強調
「本当の」「まさに…」「大変な…」「ひどい…」
!El señor López es un profesor!
(ロペスさんは本当の教師だ。)
¡Vaya una canción la de esos señores!
(その人たちの歌といったら!) - 否定文を強調
「ひとつの…もない」
No dijo una palabra.
「彼はひとことも言わなかった。」 - 他の品詞を普通名詞に変える
「…というもの」
Un cuatro en matemáticas, eso no está bien.
(数学で4をとるのはよくない。) - 好ましくない意味を強調
Él es un cobarde.
(彼は卑怯者だ。) - 形容詞や「de」などの修飾語がつく場合
Ana es una estudiante de historia.
(アナは史学科の学生です。)